潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)の大腸癌累積発生率はUC罹病期間10年で2%,20年で8%,30年で18%と報告されている.
サーベイランスは,年1回大腸内視鏡検査を行って,UC合併腫瘍を早期発見し,早期治療を行うという戦略である.
サーベイランス法として,step biopsyとtarget biopsy(狙撃生検)がある.
step biopsy
盲腸より直腸に至る全大腸の平坦粘膜からrandomな生検を合計30~40個ルーチンに行い,さらに隆起性病変を認めた場合にはそこから追加の生検を行う方法である.
Rubinら1)の報告では,90%の感度でdysplasiaを検出するには33個の生検が,95%の感度で検出するには64個の生検が必要だとした.
欧米のコンセンサス・ガイドラインではこの知見を組み込み,腫瘍が疑わしい粘膜の生検に加えて,大腸の全体を通じて10cmごとに4つのランダムな生検を行い,合計30~40個の生検を勧めている.
target biopsy
2002年より厚生労働省の「難治性炎症性腸管障害調査研究班(日比班)」において,多施設共同のprospective studyとして,「target biopsyによるサーベイランス法」というプロジェクトが施行された.
7年以上の全大腸炎,左側大腸炎を対象に,(1) 年1回のtotal colonoscopy,(2) 有所見部より生検を採取,(3) 有所見部の判定は通常内視鏡+色素撒布で判定,可能なら拡大内視鏡を併用,(4) 所見がなくてもRbからは少なくとも1個採取,
という方法で,1症例当たりの平均生検数は4.5個,cancer,HGD(high-grade dysplasia)およびLGD(low-grade dysplasia)の検出率は3.8%で,従来報告されているstep biopsy法での検出率に匹敵した2).
さらに新しい報告では,平均生検数は4.2個,腺腫を含めたUC合併腫瘍は12.2%に検出され,dysplasiaおよびcancerの形態は隆起型が61.9%,平坦型が33.3%と多くの平坦病変を見つけている.
target biopsyの優越性を述べる報告では岩男ら3)が,step biopsyでは平坦型の癌,dysplasiaを1例も診断できなかったが,
詳細な内視鏡観察によるtarget biopsyでは1年間で104例に対しcolitic cancer 1例,HGD 1例,LGD 5例を診断している.
また,Rutterら4)は100例のサーベイランス例で2,904個のstep biopsyではdysplasiaは見つからなかったが,